2025年8月10日日曜日

ある建築家から教わった「目に見えないものをデザインする」

目を引くもの、カッコイイものが良いデザインと思われがちです。


ある方の論文に、「悪いデザインというものは、ごまかすこと」で、良い建築とは「見えないものまでデザインされたもの」だと教わりました。

ではそれは何かといえば、うわべの綺麗さ、かっこ良さ、ごまかしではなくて、熱や空気、匂い、音といった「外から入ってくる豊かなもの」、心身の感触、周辺との関係(佇まい、コミュニケーション)、目には見えないけれど大事なことから逃げないで考える。


「見える化」するという言葉がありますが、表現者(設計者、つくり手)は「目に見えないものを見える化」する能力のある人です。

自分たちの価値観をきちんと社会に伝えることができる人が表現者です。建築は様々な要求が混然一体となってハーモニーを奏でるもの。

写真に写らないものも、実物では分かってしまう。見えないものを侮ってはいけない。それには、毎日コンピュータと睨めっこしているだけでは、何時まで経っても見えてきません。

まずは、生活態度を改め、心身を鍛え直し、感受性・気づき力を磨くことです。

具体的には、靴を揃える、
ゴミを拾う、
キビキビ行動、
元気溌剌、
笑顔で挨拶・・・。

習慣を変えて自己変革に尽きるのでは?と思います。


2025年8月1日金曜日

構造解説書より学ぶ「構造設計という機能」

建築における構造技術とは何か?


このような問いに対して容易に答えることはできませんが、少なくとも「建築物が成立し、実体として存在するために最低限必要なものは『構造』である」ことは確かです。

構造設計とは「何を建てるか」というより、「如何に建てるか」を設計するものであって、現代の工匠(職人)の能力を如何に如実に反映するべきもの、ということです。



しかし、実際の建築物は個々に異なり、機械製品のように在庫がきかないし、注文者の要求も異なります。

これに応える構造技術は、決まりきった手続きや手順で処理し得るものではなく、その物性ごとに千差万別です。

そこには、構造技術者は工事現場での絶え間ない自己研鑽が要求され、力学の理論と経験のバランスよい構造感覚が不可欠です。


当社社員は、デザイン設計は勿論ですが構造のプロを目指しています。

2025年7月20日日曜日

木造軸組工法の設計者に求められる基本事項

設計者・施工者の多くは、これまで在来軸組工法による住宅設計において、構造(性能)を真剣に考慮することを怠ってきました。



例えば、基礎については地盤調査会社のデータ考察を基に判断・設計しています。また、上部構造の伏図、軸組図の作成は本来、設計者が行うべき設計行為ですが、大半はプレカット工場にお任せが実状でしょう。

しかし、これからは設計図書の充実が最も優先される時代となります。その時求められるのは、設計者一人ひとりが多くの知見を持ち、的確な判断をしながら一貫性のある設計を進めていくことです。


構造設計は建築基準法の規定だけで出来るものではありません。どんなに法の規定を細かくしても、最終的には設計者の資質、判断、倫理観に委ねられる部分が残ります。結果として一つのまとまりのある設計図書を個人の力で作成できるか否か、それが設計者に求められる資質なのです。



○設計者に求められる基本事項
①木材の特性を知る事。
②建物に対する力の種類と、力の流れを理解する事。
③軸組、耐力壁、床組、小屋組、接合部の役割と、それらの組み合わせについて理解する事。
④地盤のデータを読み、基礎の適切な形状を考える事。
⑤木造の架構計画を含む構造計画が出来る事。

2025年7月10日木曜日

今一度、家づくりの責任者としての職務を自らに問う

家の存在性は、住む人の命と財産を守る事が、第一使命です。

木造の家は誰がつくっても一緒と思うかもしれませんが、それは大間違い。

木の構造は、他の構造より遥かに緻密で複雑なのです。


構造材としての木材は、樹種も多様で強度も性能も千差万別。

更に、細い材料を縦横に組む複雑な構造です。

なので、安全性を証明する構造設計は膨大な計算を要します。


ところが、建築基準法は2階建・500㎡以下の住宅は構造計算を免除されているので、実行されていないのが殆どです。

最近は、大型台風や極地地震による被害が多発しています。

法律に明記されないとしても、責任者意識を自覚するべきです。


尚且つ、直接工事を担当する職人の意識と専門力の可否により、その性能が決まります。何千万円のお金を支払って求めた家がある日突然、粗大ゴミと化した。

これほど悲惨な事故はまさに人災です。


どの様な職業でも、お客さまの要望と満足にお応え出来る度合いによって、その人の存在価値が決まります。

2025年6月20日金曜日

新耐震基準の実状と、より安全・安心の耐震性能を目指して

人の住む家は、安全性が最も基本的かつ重要な要求性能です。

暴風、豪雪、火事、地震などの災害から人の命と財産を守る役目を果たさなければなりません。家の安全については法律・基準の規定を守れば良いと考えている人が少なくありません。

しかし、これらはあくまで最低基準で、これを満たせば十分な安全を保証されるわけではありません。日本は地震国です。家の安全は耐震性能抜きでは語れません。

今、国は「耐震診断・耐震補強」は推奨しています。この耐震基準は、中地震に対して建物の損傷が軽くて済むことが目標です。

大地震に対しては基本的に「人名の安全を守ることのみ」が基準です。家や家財を守ることは対象外となるので、大地震後の復旧や続けて居住することは出来なくなる可能性が大きいのです。


●木の構造システムと設計方法

木の構造システムにとって、地震に対する性能をどの様に確保するのか?

現在、一般的には、構造自体の固さ(剛性)を高めることで、この課題に応えようとするのが主流です。

伝統的構法は、木の特性に従うことを基本姿勢にしているので、粘り強さ(靱性)を大きくする方法を選択しています。

靱性の大きい構造体は、変形することで地震のエネルギーを吸収し、元に戻る特性があります。