2022年6月20日月曜日

永く愛される為に「技能後継者の育成と地産地建」

人は長い生命活動の中で少なからず異常や不調をきたします。その時、頼りになるのはお医者さんです。


家についても、30年50年先を考えると、同じ危険性が予測できます。不具合や不都合が生じた場合、その原因を的確に判断できて、それに対処できる技術プロがいなくては、生きる命も絶たれる恐れがあります。

工場化された家であっても、一旦出来上がれば、救急の場合運んで行くことはできません。必ず往診が必要です。それもヤブ医者では困ります。

近年の日本の家づくりは新工法、新建材による簡略化により、職人の技能を磨くチャンスが失われつつあります。従って、現役職人の老齢化とともに職人技の絶滅が危惧されます。いくら便利な機械や道具ができても、使いこなす人がいなくては宝の持ち腐れです。まさに、技能職人は家のホームドクターなのです。

一方、建築材料についても同じことがいえます。30年50年後、補修や一部取り換えをする時、その材料がなければ全部入れ替えになってしまいます。

地域で生産されるものを使うのが「地産地建」です。その地域の気候風土にあった特産品ですから、将来も途絶えることはありません。

当「あがの」地域は安田瓦の生産地です。
木材は近くの山に林立しています。
腕の良い職人も多数います。





この地産地建の家づくりが広まれば、地域経済の活性にもつながります。

2022年6月10日金曜日

永く愛される為に「改築・改修の容易性と履歴の記録」

丈夫で100年以上長持ちする家であっても、そのままの形で50年・100年後に住む人々の要望に応えられるかと問われれば?


答えは一つ。永く住むには、家族構成やライフスタイルの変化等に対応できる「可変性」が求められます。それは、間取りの変更であったり、設備機器の入れ替えであったりします。




ところがその段になって、工事費がべらぼうな高額となると、飴の代金より笹の代金となります。その過大な負担を後世まで残さない為には最初が肝心です。丈夫であると同時に、多様な変化に適応できる構造体であるべきです。

釘・金物や合板に頼る短期的・平面的な構造体ではなく、太くて長い梁と柱などで組み合わされた構造体が望まれます。更に、構造体と内装や設備が分離され、改装や設備の取り換えが容易であること。その為に、床下や天井上の高さ、壁の幅、点検口、水回りの計画配置等々、長期にわたる配慮が必要です。


人間の健康維持に定期検査が必要なように、家を長持ちさせるには維持管理が重要です。こまめに点検することが、余計な費用を倹約する最大の予防策となります。その都度、定期検診や改装・改築の記録(カルテ)を残し、後世に引き継ぐ事により、その家の健康状態(資産価値)もはっきりします。

2022年6月1日水曜日

家づくりルネサンス「和」の精神・作法

最近、海外からも「和風の家」が注目されています。


それは、近年の工場生産型の画一的な家づくりに対して、むしろ新しいデザインとしての自然派志向の「和」なのかもしれません。


和風の基本精神は、四季の恵みを忘れることなく、しかし一方で、現代の住宅機能を生かす。

いくら四季を感じるといっても昔ながらの、“夏は暑く冬は寒い家”では誰も納得しないでしょう。開放的でありながら断熱性能を確保し、自然に沿った設計により、化石エネルギーの消費をできる限り抑える家でなければなりません。

日本人は室内で靴を脱いで生活しますが、この習慣だけは変わる気配がありません。その為、内装材は肌に近いところに感じられます。床・柱・壁・天井に木材や土壁など、いわゆる自然素材が見直されています。


更に、地球規模での温暖化対策が問題になっている中、建材の製造や輸送など膨大なエネルギーを費やす家づくりは避けねばなりません。

「地域の材料を使って、職人が建てる。」これこそ、日本人の「和」の精神の原点ではないでしょうか。