2022年7月20日水曜日

丈夫な家の根幹に関わる問題を明らかにする

皆さまは、丈夫な家とは柱や梁が太いことであると思っているハズです。


勿論、正解です。
が、時によっては柱が浮き上がるということをご存知でしょうか?

地震等によって、横の力(水平力)が耐力壁に加わると、その壁に接する柱に上向きの力が生じます。そうなると、柱が土台から引き抜かれてしまいます。

いくら梁が大きくて、筋かいや耐力壁が強くても、柱が土台から外れてしまえば家は潰れます。それを防ぐために、柱の接合部にボルトや板金物を取り付けます。



当社ではなるべく金物を使わず木の栓で抑えています(釘や金物で木材を傷めないために)。が、その為には、一定の地震力を想定して、柱に加わる引き抜き力を算定する必要があります(勿論、木の栓の強さも計算する)。


計算法としては、簡易法と詳細法がありますが、より正確な数値を求めるために、当社では詳細法(コンピュータ解析)で計算しています。


この計算は、柱の問題だけではなく、基礎のアンカーボルトやコンクリートの強度、鉄筋の太さや配置方法まで影響します。

これまで、あまり問題にしてこなかったようですが、実は丈夫な家の根幹に関わるコトなのです。

2022年7月10日日曜日

新耐震基準の実状と、より安全・安心の耐震性能を目指して

人の住む家は、安全性が最も基本的かつ重要な要求性能です。

暴風、豪雪、火事、地震などの災害から人の命と財産を守る役目を果たさなければなりません。家の安全については法律・基準の規定を守れば良いと考えている人が少なくありません。

しかし、これらはあくまで最低基準で、これを満たせば十分な安全を保証されるわけではありません。日本は地震国です。家の安全は耐震性能抜きでは語れません。

今、国は「耐震診断・耐震補強」は推奨しています。この耐震基準は、中地震に対して建物の損傷が軽くて済むことが目標です。

大地震に対しては基本的に「人名の安全を守ることのみ」が基準です。家や家財を守ることは対象外となるので、大地震後の復旧や続けて居住することは出来なくなる可能性が大きいのです。


●木の構造システムと設計方法

木の構造システムにとって、地震に対する性能をどの様に確保するのか?

現在、一般的には、構造自体の固さ(剛性)を高めることで、この課題に応えようとするのが主流です。

伝統的構法は、木の特性に従うことを基本姿勢にしているので、粘り強さ(靱性)を大きくする方法を選択しています。

靱性の大きい構造体は、変形することで地震のエネルギーを吸収し、元に戻る特性があります。





2022年7月1日金曜日

木造軸組工法の設計者に求められる基本事項

設計者・施工者の多くは、これまで在来軸組工法による住宅設計において、構造(性能)を真剣に考慮することを怠ってきました。



例えば、基礎については地盤調査会社のデータ考察を基に判断・設計しています。また、上部構造の伏図、軸組図の作成は本来、設計者が行うべき設計行為ですが、大半はプレカット工場にお任せが実状でしょう。

しかし、これからは設計図書の充実が最も優先される時代となります。その時求められるのは、設計者一人ひとりが多くの知見を持ち、的確な判断をしながら一貫性のある設計を進めていくことです。


構造設計は建築基準法の規定だけで出来るものではありません。どんなに法の規定を細かくしても、最終的には設計者の資質、判断、倫理観に委ねられる部分が残ります。結果として一つのまとまりのある設計図書を個人の力で作成できるか否か、それが設計者に求められる資質なのです。



○設計者に求められる基本事項
①木材の特性を知る事。
②建物に対する力の種類と、力の流れを理解する事。
③軸組、耐力壁、床組、小屋組、接合部の役割と、それらの組み合わせについて理解する事。
④地盤のデータを読み、基礎の適切な形状を考える事。
⑤木造の架構計画を含む構造計画が出来る事。