2025年9月10日水曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part3

 「1階2階、各々の重さに働く地震力」


地震による地面の揺れ具合は、震源地から同じ方向に同じ距離であれば、自宅の隣家も一緒です。揺れ具合は一緒ですが、建物にかかる地震力は、各々の家の重さで変わってきます。

建築基準法では、建物の重さ(荷重)の20%を地震力と仮定した時、構造体が損傷しないことを耐震性の基準としています。

同じ家でも、各階の働く地震力は異なります。1・2階にかかる地震力は各階とも、その階の高さの2分の1の位置に働くと考えます。


この時、1階の上部の重さということは、2階の重さも背負うということです。

つまり、1階には2階の約2倍の地震力が働きます。「高い階の方が揺れ大きくて危ない」と思っていませんでしたか? しかも1階は大きな部屋が多く、壁が2階に比べて少ないのが一般的です。

従って、耐震性の計算では、1・2階のバランスを考慮すれば、2階は問題になることは、ほとんどありません。

以下は次回です。

2025年9月1日月曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part2

 「地震力と耐震性」


最近、テレビや新聞で首都直下型、又は東南海地震の被害予測が頻繁に報じられています。

一見、私たち新潟県に住む者としては、よそ事と思うかも知れませんが、そうではありません。日本列島に住む限り、必ず地震に襲われると覚悟しなければなりません。

2016年には「熊本地震」が発生、甚大な被害を受けました。そこで今回から家と地震の関連を、数回に分けて掲載します。


☆地震とは?

建築学的には、地震の際に建物に働く力を「加速度」と捉えます。地震は、地下に震源を持つので、下から突き上げる力と、建物を横に揺らす力とが同時に存在します。

下からの力も凄まじいのですが、横に揺らす力の約50%と言われています。従って、まずは第一に耐震性能として話題にするのは、横に揺らす力の影響です。



要約すると、
①地震力=水平力と考える。
②地震力は、1・2階各々に働くので、別々に抵抗すると考える。
③地震力は、建物の重さに比例する。

次回に続く・・・。

2025年8月20日水曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part1

 「梁のたわみに対する設計数値」


数年前に、当社のお客さまから相談を受けました。
息子さんが仙台市に家を新築することになり、大手ハウスメーカーに頼むことになった。ところで、2階の書斎の書棚に大量の本を置くのだが、大丈夫か診て欲しいとのことでした。

そこで今回は、木の梁についての性能です。
お客さまが心配しているのは、梁が折れるかどうかより、2階の床がたわむのではないか?です。

梁のたわみの計算には、
①荷重の分布による係数
②荷重の大きさ(W)
③スパン(支持点間の距離:L)
④部材のヤング係数(たわみに対する強度:E)
⑤部材の断面形状(縦横寸法による係数:I)
の5項目が影響します。

等分布荷重の場合、数式で表すと δ(たわみの量)=5W L ⁴/384E I となります。



たわみの量は梁の長さ(スパン)との比率で表します。
たわみ量が1cmとすると、スパンが2mの場合は 1/200、4mであれば 1/400となります。



学会の告示に示される制限値は、2階の床の場合 1/300、屋根の梁の場合は 1/200となっています。

この数値はあくまでも参考値ですので、その状況により的確な判断が重要です。

2025年8月10日日曜日

ある建築家から教わった「目に見えないものをデザインする」

目を引くもの、カッコイイものが良いデザインと思われがちです。


ある方の論文に、「悪いデザインというものは、ごまかすこと」で、良い建築とは「見えないものまでデザインされたもの」だと教わりました。

ではそれは何かといえば、うわべの綺麗さ、かっこ良さ、ごまかしではなくて、熱や空気、匂い、音といった「外から入ってくる豊かなもの」、心身の感触、周辺との関係(佇まい、コミュニケーション)、目には見えないけれど大事なことから逃げないで考える。


「見える化」するという言葉がありますが、表現者(設計者、つくり手)は「目に見えないものを見える化」する能力のある人です。

自分たちの価値観をきちんと社会に伝えることができる人が表現者です。建築は様々な要求が混然一体となってハーモニーを奏でるもの。

写真に写らないものも、実物では分かってしまう。見えないものを侮ってはいけない。それには、毎日コンピュータと睨めっこしているだけでは、何時まで経っても見えてきません。

まずは、生活態度を改め、心身を鍛え直し、感受性・気づき力を磨くことです。

具体的には、靴を揃える、
ゴミを拾う、
キビキビ行動、
元気溌剌、
笑顔で挨拶・・・。

習慣を変えて自己変革に尽きるのでは?と思います。


2025年8月1日金曜日

構造解説書より学ぶ「構造設計という機能」

建築における構造技術とは何か?


このような問いに対して容易に答えることはできませんが、少なくとも「建築物が成立し、実体として存在するために最低限必要なものは『構造』である」ことは確かです。

構造設計とは「何を建てるか」というより、「如何に建てるか」を設計するものであって、現代の工匠(職人)の能力を如何に如実に反映するべきもの、ということです。



しかし、実際の建築物は個々に異なり、機械製品のように在庫がきかないし、注文者の要求も異なります。

これに応える構造技術は、決まりきった手続きや手順で処理し得るものではなく、その物性ごとに千差万別です。

そこには、構造技術者は工事現場での絶え間ない自己研鑽が要求され、力学の理論と経験のバランスよい構造感覚が不可欠です。


当社社員は、デザイン設計は勿論ですが構造のプロを目指しています。

2025年7月20日日曜日

木造軸組工法の設計者に求められる基本事項

設計者・施工者の多くは、これまで在来軸組工法による住宅設計において、構造(性能)を真剣に考慮することを怠ってきました。



例えば、基礎については地盤調査会社のデータ考察を基に判断・設計しています。また、上部構造の伏図、軸組図の作成は本来、設計者が行うべき設計行為ですが、大半はプレカット工場にお任せが実状でしょう。

しかし、これからは設計図書の充実が最も優先される時代となります。その時求められるのは、設計者一人ひとりが多くの知見を持ち、的確な判断をしながら一貫性のある設計を進めていくことです。


構造設計は建築基準法の規定だけで出来るものではありません。どんなに法の規定を細かくしても、最終的には設計者の資質、判断、倫理観に委ねられる部分が残ります。結果として一つのまとまりのある設計図書を個人の力で作成できるか否か、それが設計者に求められる資質なのです。



○設計者に求められる基本事項
①木材の特性を知る事。
②建物に対する力の種類と、力の流れを理解する事。
③軸組、耐力壁、床組、小屋組、接合部の役割と、それらの組み合わせについて理解する事。
④地盤のデータを読み、基礎の適切な形状を考える事。
⑤木造の架構計画を含む構造計画が出来る事。

2025年7月10日木曜日

今一度、家づくりの責任者としての職務を自らに問う

家の存在性は、住む人の命と財産を守る事が、第一使命です。

木造の家は誰がつくっても一緒と思うかもしれませんが、それは大間違い。

木の構造は、他の構造より遥かに緻密で複雑なのです。


構造材としての木材は、樹種も多様で強度も性能も千差万別。

更に、細い材料を縦横に組む複雑な構造です。

なので、安全性を証明する構造設計は膨大な計算を要します。


ところが、建築基準法は2階建・500㎡以下の住宅は構造計算を免除されているので、実行されていないのが殆どです。

最近は、大型台風や極地地震による被害が多発しています。

法律に明記されないとしても、責任者意識を自覚するべきです。


尚且つ、直接工事を担当する職人の意識と専門力の可否により、その性能が決まります。何千万円のお金を支払って求めた家がある日突然、粗大ゴミと化した。

これほど悲惨な事故はまさに人災です。


どの様な職業でも、お客さまの要望と満足にお応え出来る度合いによって、その人の存在価値が決まります。

2025年6月20日金曜日

新耐震基準の実状と、より安全・安心の耐震性能を目指して

人の住む家は、安全性が最も基本的かつ重要な要求性能です。

暴風、豪雪、火事、地震などの災害から人の命と財産を守る役目を果たさなければなりません。家の安全については法律・基準の規定を守れば良いと考えている人が少なくありません。

しかし、これらはあくまで最低基準で、これを満たせば十分な安全を保証されるわけではありません。日本は地震国です。家の安全は耐震性能抜きでは語れません。

今、国は「耐震診断・耐震補強」は推奨しています。この耐震基準は、中地震に対して建物の損傷が軽くて済むことが目標です。

大地震に対しては基本的に「人名の安全を守ることのみ」が基準です。家や家財を守ることは対象外となるので、大地震後の復旧や続けて居住することは出来なくなる可能性が大きいのです。


●木の構造システムと設計方法

木の構造システムにとって、地震に対する性能をどの様に確保するのか?

現在、一般的には、構造自体の固さ(剛性)を高めることで、この課題に応えようとするのが主流です。

伝統的構法は、木の特性に従うことを基本姿勢にしているので、粘り強さ(靱性)を大きくする方法を選択しています。

靱性の大きい構造体は、変形することで地震のエネルギーを吸収し、元に戻る特性があります。






2025年6月10日火曜日

丈夫な家の根幹に関わる問題を明らかにする

皆さまは、丈夫な家とは柱や梁が太いことであると思っているハズです。


勿論、正解です。
が、時によっては柱が浮き上がるということをご存知でしょうか?

地震等によって、横の力(水平力)が耐力壁に加わると、その壁に接する柱に上向きの力が生じます。そうなると、柱が土台から引き抜かれてしまいます。

いくら梁が大きくて、筋かいや耐力壁が強くても、柱が土台から外れてしまえば家は潰れます。それを防ぐために、柱の接合部にボルトや板金物を取り付けます。



当社ではなるべく金物を使わず木の栓で抑えています(釘や金物で木材を傷めないために)。が、その為には、一定の地震力を想定して、柱に加わる引き抜き力を算定する必要があります(勿論、木の栓の強さも計算する)。


計算法としては、簡易法と詳細法がありますが、より正確な数値を求めるために、当社では詳細法(コンピュータ解析)で計算しています。


この計算は、柱の問題だけではなく、基礎のアンカーボルトやコンクリートの強度、鉄筋の太さや配置方法まで影響します。

これまで、あまり問題にしてこなかったようですが、実は丈夫な家の根幹に関わるコトなのです。

2025年6月1日日曜日

伝統構法の家は高度な耐震性能で住む人の生命と財産を守る

日本は地震の国です。

いつ何時大地震が発生するか分かりません。

家に課せられた第一使命は、住む人の生命と財産を守る事です。

その為にも高度な耐震性能が求められます。

私たちがつくる伝統的な木造軸組は、木材のめり込み特性を生かした独特の仕口や継ぎ手の形式を持っています。


木材どうしの接合部に生じるめり込みによって、地震時において軸組はしなやかに変形します。

木造軸組みの接合部は架構全体の安全性を左右する大切な要素です。

近年の住宅生産では加工に手間の掛かる仕口を用いず、多くの場合、簡易な接合部が採用されています。



この様な形式の仕口には変形能力とエネルギー吸収を期待できず、むしろ地震時の変形によって接合部の抜け出しが懸念されます。

必要以上に強固な金物を用いれば、木材の仕口における回転変形を強く拘束してしまい、大きな地震を受けた時には木材を破壊する懸念があります。


2025年5月20日火曜日

木組みの構造を室内に現し、快適な居住空間をつくる

人は目に入るものによって様々な事を連想します。

家は住まいですので毎日そこで生活をします。

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2023_08_01-2その室内空間のバランスによって住む人に様々な影響を与えます。
木は生き物なので木目の美しさと木肌の柔らかさに親近感が増します。
太くて長い木材を組み合わせた構造体は見る人に力強さと安心感を与えます。
この様な居住区間で何十年も生活していると、何事に対してもプラス思考で対処できるようになります。
木組みの構造は見た目だけでなく、地震や台風に強い事は構造計算で証明されています。私たちは長年、大工職人の手刻みによる伝統構法の家を継承してきました。

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2023_08_01-5この工法はクギや金物を使わず構造体を組み立てます。
これであれば、デザインとして室内に現せます。
居住性の良さは長く住む要因となり、結果として資産価値の高い家を取得した事になります。

2025年5月10日土曜日

要望を満たす家を取得するには誰に頼めば良いのか?

家の注文を受けたらお客さまの要望を満たさなければなりません。

地域・家族構成・職業等の違いによって求める内容は様々です。

利便性や居住性・デザインの違いはあっても、丈夫で長持ちする家は一緒です。

この要望にお応えする為には、設計者の、木造に関する経験とセンスが問われます。


地震や台風に襲われても、倒壊しない構造体をつくるには構造計算が必要です。

これら全ての要望を図面に掲載し、施工管理者にバトンタッチします。


管理者は図面を精査し、各工事担当者に指示を出します。全ての工種は長年の経験を有した職人によって行われます。

特に木造の構造体を組み立てる大工職人の技がその家の価値を左右します。


最近は木造の家をつくる技術を有した設計者や各種職人が少なくなりました。

私たちは長年、設計・施工の一環体制で木造の家をつくってきました。

こらからも、若い社員を養成して価値のある家づくりに励みます。


2025年5月1日木曜日

家の果たす様々な役割

家に求められる役割は沢山あります。

その第一は、住む人の健康・生命と財産を守る事です。

その為には大きな地震や台風に襲われても倒壊しない構造が必要です。



その安全を構造計算によって証明されていれば安心して住めます。

火災が発生しないように、防火に対する対応も大切です。

家を取得するには大金を払うので、永く住めて途中出費が少ない事が求められます。

家族が一緒に生活する住まいなので、室内は動きやすく便利で快適な空間。

幼い子供が大人になるまで勉強のできる遮音性の高い子供部屋。

トイレ・バスルーム・キッチン等、便利な設備機器。重厚でカッコ良く、ステイタスを感じるデザインの外観。



光熱水費を節約できる、高断熱・高気密の省エネ仕様。これらは家を求める人にとっての基本事項です。

住む人の違いによって求める要望が他にもあるでしょうから、それらを明確にする事が大切です。



2025年4月20日日曜日

木造の家は各種職人の高度な技で建てられます

木造の家は20数職種の職人が共同でつくる合作です。

その中に一人でも未熟者が混じっていれば後で取り返しのつかない事になりかねません。全ての工種に完璧さが求められますが、特に基礎工事は重要です。

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基礎は建物の沈下・浮き上がりを防ぐと伴に、地震などの水平力による転倒・横移動を防ぐ大きな役割を担っています。
その為にコンクリートの強度や鉄筋の適正配置の判断力が求められます。
次に大事なのは、木組みの構造体をつくる大工職人です。家の最大使命は地震や台風による倒壊を防ぐ事です。

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木と木を組み合わせる構造体は、押されても元に戻る弾力性を有する耐震構造となります。これをつくるには大工職人の高度な技術が必要です。
更に屋根と外壁の施工精度が完璧であれば、丈夫で長持ちのする家になります。
家はお客さまの土地の上に建てる手作り品なので、各種職人の力量によって価値が決まります。