2025年6月20日金曜日

新耐震基準の実状と、より安全・安心の耐震性能を目指して

人の住む家は、安全性が最も基本的かつ重要な要求性能です。

暴風、豪雪、火事、地震などの災害から人の命と財産を守る役目を果たさなければなりません。家の安全については法律・基準の規定を守れば良いと考えている人が少なくありません。

しかし、これらはあくまで最低基準で、これを満たせば十分な安全を保証されるわけではありません。日本は地震国です。家の安全は耐震性能抜きでは語れません。

今、国は「耐震診断・耐震補強」は推奨しています。この耐震基準は、中地震に対して建物の損傷が軽くて済むことが目標です。

大地震に対しては基本的に「人名の安全を守ることのみ」が基準です。家や家財を守ることは対象外となるので、大地震後の復旧や続けて居住することは出来なくなる可能性が大きいのです。


●木の構造システムと設計方法

木の構造システムにとって、地震に対する性能をどの様に確保するのか?

現在、一般的には、構造自体の固さ(剛性)を高めることで、この課題に応えようとするのが主流です。

伝統的構法は、木の特性に従うことを基本姿勢にしているので、粘り強さ(靱性)を大きくする方法を選択しています。

靱性の大きい構造体は、変形することで地震のエネルギーを吸収し、元に戻る特性があります。






2025年6月10日火曜日

丈夫な家の根幹に関わる問題を明らかにする

皆さまは、丈夫な家とは柱や梁が太いことであると思っているハズです。


勿論、正解です。
が、時によっては柱が浮き上がるということをご存知でしょうか?

地震等によって、横の力(水平力)が耐力壁に加わると、その壁に接する柱に上向きの力が生じます。そうなると、柱が土台から引き抜かれてしまいます。

いくら梁が大きくて、筋かいや耐力壁が強くても、柱が土台から外れてしまえば家は潰れます。それを防ぐために、柱の接合部にボルトや板金物を取り付けます。



当社ではなるべく金物を使わず木の栓で抑えています(釘や金物で木材を傷めないために)。が、その為には、一定の地震力を想定して、柱に加わる引き抜き力を算定する必要があります(勿論、木の栓の強さも計算する)。


計算法としては、簡易法と詳細法がありますが、より正確な数値を求めるために、当社では詳細法(コンピュータ解析)で計算しています。


この計算は、柱の問題だけではなく、基礎のアンカーボルトやコンクリートの強度、鉄筋の太さや配置方法まで影響します。

これまで、あまり問題にしてこなかったようですが、実は丈夫な家の根幹に関わるコトなのです。

2025年6月1日日曜日

伝統構法の家は高度な耐震性能で住む人の生命と財産を守る

日本は地震の国です。

いつ何時大地震が発生するか分かりません。

家に課せられた第一使命は、住む人の生命と財産を守る事です。

その為にも高度な耐震性能が求められます。

私たちがつくる伝統的な木造軸組は、木材のめり込み特性を生かした独特の仕口や継ぎ手の形式を持っています。


木材どうしの接合部に生じるめり込みによって、地震時において軸組はしなやかに変形します。

木造軸組みの接合部は架構全体の安全性を左右する大切な要素です。

近年の住宅生産では加工に手間の掛かる仕口を用いず、多くの場合、簡易な接合部が採用されています。



この様な形式の仕口には変形能力とエネルギー吸収を期待できず、むしろ地震時の変形によって接合部の抜け出しが懸念されます。

必要以上に強固な金物を用いれば、木材の仕口における回転変形を強く拘束してしまい、大きな地震を受けた時には木材を破壊する懸念があります。