2024年12月20日金曜日

間取り変更を伴う改築は、再度の構造計算が必要です

間取り変更を伴う改築は、柱や壁、梁を入れ替えるので構造体が変わります。

その結果、地震に対する耐力不足が発生したり、耐力壁の位置が変わる可能性があります。それを防ぐ為に再度の構造計算が必要です。

最初は床面積に必要な耐力壁の長さを計算します。

足りなければ補強しなければなりません。



次に偏心率を求めます。

先ずは、家の重量を計算して重心を決めます。

同時に耐力壁の位置によって決まる剛心を決めます。

それによって判明する偏心率を計算します。

不適合であれば、耐力壁の位置を変えなければなりません。

伝統構法の家や古民家は耐力要素が違うので許容応力度計算法では対応できません。




それに対応する為に限界耐力計算法で解析します。

私たちは各部屋の配置を決める時、耐力壁の位置も同時に考えます。

この長年の経験によってやり直す必要はなくなりました。


2024年12月10日火曜日

資産価値の高い家を証明する為に、工事金額を工種毎に明記する

家の建築を依頼された場合、設計と同時に工事費のバランスを考慮しなければなりません。家に対する要望を聞くのは当然ですが、同時に予算の限度も聞く。

そうでないと、設計が出来ても次の段階に進むことが出来ません。

ある程度の基本プランが出来たら、積算も同時にやる。

依頼者の要望をそのまま鵜呑みにしていたら膨大な金額になりかねません。



なので、各工種毎に数量と金額を明記して、依頼者と優先順位を決めていきます。

設計者の責務は、永く住めて丈夫で資産価値のある家を提案する事です。

その為に基礎、構造体、屋根、外壁等、取り換えの難しい工種に予算を優先します。

それを実現するには、設計者は図面を描くだけではなく、積算能力も必要です。

私たちは長年、お客様・設計者・現場担当者が三位一体となって家を創ってきました。

その結果が信頼と満足につながると考えています。



2024年12月1日日曜日

古民家の改築・改修、お任せください

80年以上経った古民家は、地域にとって貴重な財産となります。

当然ですが、現在建てられている家とは構造も仕様も違います。

基礎の部分はコンクリートではなく、礎石の上に柱が直接立っています。

壁の部分は土壁で屋根は瓦葺きです。

改築工事を行う場合は耐震改修工事も同時に行います。

合板や金物に頼る構造とは根底から違うので、高度な構造計算をしなければなりません。古民家を改築するには、伝統構法に詳しい設計力が必要です。

改築工事は構造体を変える事になるので、大工職人の高度な技能も必要です。

梁や柱を入れ替えるには現場作業となりますので、ノコギリ・ノミ・カンナを自在に操る職人技です。




私たちは設計者も大工職人も、これまで何度も経験してきました。

もし、古民家を改築する時がありましたら、お声がけをお願いします。




2024年11月20日水曜日

耐震性能を高度な構造計算により明記する

2025年から建築基準法が改正され、木造の家をつくる場合でも構造計算が必要となります。

今現在は、3階以上か床面積が500㎡以上でなければ構造計算をしなくても許可が降ります。

その結果、殆どの設計者は構造計算・構造設計に無関心です。

日本は地震の国です。

いつ何時襲われるか分かりません。

その時に倒壊すれば悔やんでも悔やみきれません。

今後は、木造の建物であっても規模の大小に関わらず、構造計算が必要になります。

家を求めるには高額な出費を伴います。

その為には永く住めて財産価値の高い家でなければなりません。

私たちのつくる家は伝統構法による木組みの構造です。



木の特性を活かした大工職人の技術によって組み立てる高度な耐震性能を有する構造です。設計担当者は、それを証明する為に限界耐力計算法で構造計算を行います。

これによって安全性が数値によって明記されます。




2024年11月10日日曜日

住まいの果たす役割とは

住まいにおいて、安全性は最も基本的かつ重要な要求性能です。

家は防風、豪雪、火事、地震などの災害から人命と財産を守る役目を果たさなければなりません。

仮に、家が建てられてからその役割を終えて解体されるまでの間に、大きな災害に遭わなければ、これは最も幸いな事です。



しかし、家が頑丈に建てられた事が決して無駄になるわけではありません。

毎日の不安は一時の災難よりも人に与える害が大きい場合もあります。

一時の安全と毎日の安心がともに実現してはじめて、私たちの平穏と健康的な生活は保たれます。

安全な家なら大きな災害に遭っても、私たちの命と財産は守られ、再び日常生活に戻る事ができます。



住まいの安全については法律・基準の規定を守ればよいと考えている人が少なくありません。

しかしこれはあくまで最低基準で、これを満たせば十分な安全性が保障されるわけではありません。

2024年11月1日金曜日

住む人の生命と財産を守る耐震設計

耐震設計では、一生に一度遭遇するかどうかの大地震(震度7程度)と、50年に12度程度は遭遇する中小地震(震度5以下)を分けて考えています。

中小の地震では建物自体に被害がないように、大地震の際は建物に損害があっても仕方がないが、人の生命と財産は守る、と考えます。

すなわち、耐震性とは、建物が絶対に壊れない、という事を意味している訳ではありません。



地震には縦揺れと横揺れがあります。

縦揺れは直下型の地震の際に起こりますが、震源が近いため縦横の揺れが同時に襲い、被害を大きくしがちです。

しかし、耐震設計では地震の力を横方向(水平力)として捉え、その力に耐えるように設計をします。

というのも、建物には日常的に重力が働いていて、それに耐えるようにつくられています。

建物が横方向の力を受けるのは、地震や台風などです。

横の力に耐えるには、重力に耐えるのと異なる強さが必要なのです。

この構造体をつくるのが耐震設計です。


2024年10月20日日曜日

既存の家の改築は大工職人の技能と設計士の技術を要します

これからは既存の家の有効利用が求められる時代です。

それによって経済的負担が少なくて済みます。

家の様式は地域や年代の違いにより様々です。

その為、改築を行う時は、高度な知識と技能をもった大工職人でなければ出来ません。


同時に設計者も構造設計や耐震診断等、高度な技術と経験が求められます。

既存の家の殆どは地震に襲われれば倒壊します。

これに対して如何に対応するか?経験豊かな大工職人の技能と設計者の技術が求められます。

ところが最近は、ノコギリやノミ、カンナを自在に使える大工職人が少なくなりました。これは若い時に訓練しなければ身に付きません。



その為に私たちは若い大工さんの育成に努めています。

同時に設計者も耐震診断の資格を取り、現場で大工職人と一緒になって様々な工法を探求しています。

2024年10月10日木曜日

「あがの杉」と「あがの職人」による伝統構法の「あがの家」

阿賀野市安田地区は、先人の技を継承した大工・左官・屋根・板金等の職人が多く居ます。安田瓦の産地でもあります。

隣の阿賀町の殆どは森林で杉材が豊富です。
これらの建築材料を有効に活用するのが、伝統構法です。
先ずは構造ですが、太くて長い木材を大工の手刻みで組み立てます。


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2022_12_20-2今風の細くて短い木材をプレカット工場で加工し、クギや金物に頼る工法とは根底から違います。
基礎は事前に地盤調査を行ってそれに対応出来る形状にします。
屋根は耐久性と断熱性能に優れた安田瓦を葺きます。
これらの施工によって地震や台風・雪に強い構造体が出来上がります。


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2022_12_20-4
家は住む人の健康と生命を守る構造物であり、生涯で最大の出費を伴う資産です。
最低でも70年以上、価値が下らない事が求められます。
これらの様々な条件を満足する為に立ち上げたのが「あがの家・創生プロジェクト」です。

2024年10月1日火曜日

今こそ、失われた一家団らんを取り戻すチャンス

人は親から生まれて育てられ人間になります。

夫婦・親子・兄弟姉妹の集団が家族です。
家族が集まって、仲良く談笑したり、楽しい時間を過ごすことを「一家団らん」と言います。
近年は社会構造が複雑化してその機会が失われています。


ところが新型コロナウィルスや自然災害など、色々な事象が私たちを襲います。
人生の幸せとは何なのか?
家族が集う家の存在性とは何なのか?
単なる、帰る・食べる・寝る箱物から、脱皮しなければなりません。


家に必要とされる昨日は多岐にわたります。尚且つ、生涯で最大の出費を要します。
今まさに時代の転換期、求める人も提供する人も、その見識により将来が決まります。
全て一律とは行きませんが、共通する価値基準はあるはずです。

2024年9月20日金曜日

今の家を仕立て直し、より永く、より快適に

家は人が生活するために、多種多様な機能が複雑に絡みあった複合物です。


常に風雨にさらされ、時間が経てば様々な不具合が生じます。その場合、往診が必要です。

その現状や原因を的確に判断できる技術プロがいなくては、生きる命も絶たれる恐れがあります。ヤブ医者では困ります。


最近は新工法、新建材による簡略化により、高度な専門技術職人が少なくなりました。いくら高度なコンピューターや機械があっても、使いこなす人がいなくては無用の長物です。

まさに、住宅診断士は家のホームドクターなのです。

2024年9月10日火曜日

難易度が高いからこそ、価値・魅力がある

古い家の再生というと、ややもすると、住む人も建築担当者も意匠・デザイン等、表面的な見た目のモノだけに拘ろうとします。



が、肝心なのは、家は住む人の心身の健康と生命の安全と財産を守る、構築物であるということです。当然のことながら、現行の耐震基準を満たすものでなければなりません。


ところが、厄介なことに、今風の金物や筋交い、合板に頼る構造体とは根本から違います。となると、伝統木構造の力学的な根拠に基づいた構造計算で証明するコトが必要となります。

尚且つ、部材の入れ替え、部材補強となると、ノコギリ・ノミ・カンナを自在に操り、経験と美感性を備えた本物の大工職人の技が絶対条件となります。

2024年9月1日日曜日

地域の伝統文化・技能を後世にバトンタッチ

日本の木造建築物と鉄やコンクリート造りとの最大の違いは、腐れと虫害の管理さえ適正であれば、半永久的に機能する特長があります。


古い家の再活用をお勧めしていますが、何もかもという訳ではありません。



費用の面も含め、価値・メリットの客観的な判断が重要です。

それには、調査・診断・改修設計・施工法・維持管理等の知識・技術の専門力が必要になります。


その様な人材を育成しながら、地域で活躍すれば、歴史ある街並みも、各地に多く存在する空き家や情緒ある古家もむやみに壊されずに地域の活性策にもなります。

2024年8月20日火曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part6

建物の変形(層間変形)について」


これまでは、「耐震性能における地震力とは水平力のことであり、建物の重量と固有周期が影響する」というのが、概略の説明でした。

今度は建物の地震に対する耐力(抵抗力)についてのお話しです。

建物に水平力を加えて徐々に強くしていきます。すると、建物は少しずつ変形を始め、窓ガラスが割れたり、外壁にヒビ割れが入ったりします。

この現象の現れる変形の度合い(変形量)は、各階の高さ(H)と、変形の幅(δ)の比(層間変形角 θ=δ/H)で表します。


外壁のサイディングでヒビ割れの起きる限界の θ は 120分の1(損傷限界)とされ、階の高さが3mだとすると2.5cmになります。

これに対して建物が倒壊する限度を「安全限界」と言います。

今風の合板や筋かい等、釘や金物に頼る構造の安全限界は30分の1とされています。

当社がお勧めする木組みによる伝統的構造の場合は、15分の1までの粘り強さが実験で証明されています。

2024年8月10日土曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part5

「地震の揺れを左右する、地盤と建物の周期」


地震とは地盤の揺れによって発生しますが、この揺れには周期があります。

揺れの周期とは、振り子のように揺れ、一往復にかかる時間を指します。場所によって違いますが、0.8~1.0秒に集中します。

地盤の特性を簡易計算では、1・2・3種に分けて計算します。

一方、建物も同じ様に揺れの周期を持ちます。その周期は、建物によって固有の周期を持つことから「固有周期」と呼ばれています。

この固有周期は一般的に建物が高く、重く、柔軟なものほど長くなり、低く、軽く、強固なものほど短くなります。

そして、建物の固有周期と地盤の揺れの周期が一致(共振)すると、建物の揺れが増幅され、倒壊などの大きな被害を引き起こす原因となります。


つまり、地盤の周期に近い固有周期を持つ建物を造らないことが、耐震化の重要なポイントとなります。

軟弱地盤の周期曲線はすそ野が広いために、その範囲から外に抜け出せず、不利な条件が重なります。

2024年8月1日木曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part4

前回も書きましたが、地震は日本に住んでいる限り、決して他人事ではありません。そこで、今回は「家の耐震等級」です。


耐震等級とは、1~3の数値が大きくなるほど耐震性能が高くなります。

耐震等級1の建物とは、震度5の地震時、外壁のヒビ割れが発生しない状態で、かつ、震度6強の地震に対して倒壊しない耐震性能を有する建物のことです。

耐震等級2は、等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の耐震性能を有する意味になります。

耐震等級1は、建築基準法の基準で、地震力を建物の重さの20%として構造躯体を検討します。耐震等級3はその1.5倍だから、地震力を建物荷重の30%として構造躯体の損傷を検討することとなります。

但し、この検証法は、建物が地震の揺れに対して弾性状態(耐力が一定で反発力が変化しない状態)を前提とします。



ですので、どれ位の地震力によって倒壊するかを検証できるものではありません。

その検証法となると、今、当社でチャレンジしている、更なる精密・高度な「限界耐力計算法」が必要となります。

2024年7月20日土曜日

家の価値・機能・性能の関連特性を知る Part3

「1階2階、各々の重さに働く地震力」


地震による地面の揺れ具合は、震源地から同じ方向に同じ距離であれば、自宅の隣家も一緒です。揺れ具合は一緒ですが、建物にかかる地震力は、各々の家の重さで変わってきます。

建築基準法では、建物の重さ(荷重)の20%を地震力と仮定した時、構造体が損傷しないことを耐震性の基準としています。

同じ家でも、各階の働く地震力は異なります。1・2階にかかる地震力は各階とも、その階の高さの2分の1の位置に働くと考えます。


この時、1階の上部の重さということは、2階の重さも背負うということです。

つまり、1階には2階の約2倍の地震力が働きます。「高い階の方が揺れ大きくて危ない」と思っていませんでしたか? しかも1階は大きな部屋が多く、壁が2階に比べて少ないのが一般的です。

従って、耐震性の計算では、1・2階のバランスを考慮すれば、2階は問題になることは、ほとんどありません。

以下は次回です。