家づくりで大切はことは、「そこに住まう家族の哲学や美学、さらには、その家の伝統と文化の総結集である」ということです。
住まいを、安全性・耐候性・耐久性などの建築工学や、快適性・合理性・居住性などの機能性を第一と考えるなら、それだけを追求した単なる建物(箱)を造るだけでいいかもしれません。
しかし、住まいを「人生観の結集」として、「人づくりの場」「親から子孫へのメッセージ」と考えるなら、教え、守り、残さなければならないものを表現し、伝えることが必要です。子世代への無言の教育の場として、また同時に一家の精神的な拠り所として考えていくことが大切なのではないでしょうか。
家族が四季折々の行事を楽しみながら、あまり過保護にせず、「不便を楽しむ」くらいのことがあってもいいのかもしれません。いくら温度や湿度が快適に管理された家でも、人工的に密閉された空間では、本当に健康的な暮らしをすることは難しいでしょう。
一方、家の果たす役割は時代とともに、暮らし方とともに変化するということも考えておかなければなりません。子供が成長し、独立して家を出て老夫婦だけで住むようになった時にどうするか。維持管理を考えれば、必要最低限の部屋で暮らすのが理想です。