消費材といわれる工場製品は通常、カタログや店頭でその価値を判断し購入します。しかし家はオーダーメイドの現地一品生産なので、現物は存在しません。
提供者を決め、様々な期待・要望を検討しながら設計図と価格が決まります。その後、数カ月の工事を経て完成します。待ちに待った夢のマイホームを手にした喜びの一瞬です。だがしかし、家は完成時の外見だけでは真の価値はわかりません。本当の価値は、時間の経過によって判明するからです。
第一のプロセスは、住んで1年目。春・夏・秋・冬の気候変化に伴う、雨・風・雪・日照などに対する適応は? 生活する中で、不便・狭い・うるさい・暑い・寒い・暗い・落ち着かない等々、機能・利便性は満足か? 光熱水費や清掃費等のランニングコストは? これらが判明します。
第二のプロセスは、5年位の経過に伴う、住む人に対する影響です。心身の健康、生活スタイル、幼児・子供の情緒・教育効果、家族と縁者との関係、近隣との関係、等々が判明します。
第三のプロセスは、10年以降を経過すると、家の性能・品質が判明します。耐力性(構造上の不具合)、耐久性(劣化・腐食・虫害)、地盤沈下や家の傾き、資産価値(材料の品質・工法)、周囲や時代変化との違和感、愛着や誇り(飽きる・不満・コンプレックス)等々。
生涯で最大の出費である家の購入。尚且つ「これほど複雑で厄介な代物はない!」。提供者としてもその責任の重大さを痛感しています。