2019年1月20日日曜日

木造軸組構法の設計者に求められる基本事項

設計者・施工者の多くは、これまで在来軸組工法による住宅設計において、構造(性能)を真剣に考慮することを怠ってきました。


例えば、基礎については地盤調査会社のデータ考察を基に判断・設計しています。また、上部構造の伏図、軸組図の作成は本来、設計者が行うべき設計行為ですが、大半はプレカット工場にお任せが実状でしょう。

しかし、これからは設計図書の充実が最も優先される時代となります。その時求められるのは、設計者一人ひとりが多くの知見を持ち、的確な判断をしながら一貫性のある設計を進めていくことです。


構造設計は建築基準法の規定だけで出来るものではありません。どんなに法の規定を細かくしても、最終的には設計者の資質、判断、倫理観に委ねられる部分が残ります。結果として一つのまとまりのある設計図書を個人の力で作成できるか否か、それが設計者に求められる資質なのです。



○設計者に求められる基本事項
①木材の特性を知る事。
②建物に対する力の種類と、力の流れを理解する事。
③軸組、耐力壁、床組、小屋組、接合部の役割と、それらの組み合わせについて理解する事。
④地盤のデータを読み、基礎の適切な形状を考える事。
⑤木造の架構計画を含む構造計画が出来る事。

2019年1月10日木曜日

永く愛されるために「技能後継者の育成と地産地建」

人は長い生命活動の中で少なからず異常や不調をきたします。その時、頼りになるのはお医者さんです。

家についても、30年50年先を考えると、同じ危険性が予測できます。不具合や不都合が生じた場合、その原因を的確に判断できて、それに対処できる技術プロがいなくては、生きる命も絶たれる恐れがあります。

工場化された家であっても、一旦出来上がれば、救急の場合運んで行くことはできません。必ず往診が必要です。それもヤブ医者では困ります。

近年の日本の家づくりは新工法、新建材による簡略化により、職人の技能を磨くチャンスが失われつつあります。従って、現役職人の老齢化とともに職人技の絶滅が危惧されます。いくら便利な機械や道具ができても、使いこなす人がいなくては宝の持ち腐れです。まさに、技能職人は家のホームドクターなのです。

一方、建築材料についても同じことがいえます。30年50年後、補修や一部取り換えをする時、その材料がなければ全部入れ替えになってしまいます。

地域で生産されるものを使うのが「地産地建」です。その地域の気候風土にあった特産品ですから、将来も途絶えることはありません。

当「あがの」地域は安田瓦の生産地です。
木材は近くの山に林立しています。
腕の良い職人も多数います。





この地産地建の家づくりが広まれば、地域経済の活性にもつながります。






2019年1月1日火曜日

永く愛される為に「改築・改修の容易性と履歴の記録」

丈夫で100年以上長持ちする家であっても、そのままの形で50年・100年後に住む人々の要望に応えられるかと問われれば?

答えは一つ。永く住むには、家族構成やライフスタイルの変化等に対応できる「可変性」が求められます。それは、間取りの変更であったり、設備機器の入れ替えであったりします。




ところがその段になって、工事費がべらぼうな高額となると、飴の代金より笹の代金となります。その過大な負担を後世まで残さない為には最初が肝心です。丈夫であると同時に、多様な変化に適応できる構造体であるべきです。

釘・金物や合板に頼る短期的・平面的な構造体ではなく、太くて長い梁と柱などで組み合わされた構造体が望まれます。更に、構造体と内装や設備が分離され、改装や設備の取り換えが容易であること。その為に、床下や天井上の高さ、壁の幅、点検口、水回りの計画配置等々、長期にわたる配慮が必要です。


人間の健康維持に定期検査が必要なように、家を長持ちさせるには維持管理が重要です。こまめに点検することが、余計な費用を倹約する最大の予防策となります。その都度、定期検診や改装・改築の記録(カルテ)を残し、後世に引き継ぐ事により、その家の健康状態(資産価値)もはっきりします。