2017年1月30日月曜日

敷地を読み、意匠と構造の一体をデザインする設計

近頃は、自分だけの個性的な家を望んだのでしょうが、住宅雑誌や住まいの本の受け売りで、似たような無国籍の家が建ち並んでいます。この現実を見ると悲しいものがあります。住まいは「斬新な」と言えるほど個性的である必要はなく、雑誌の切り抜きを寄せ集めたような安易なものではありません。

一般的には目を引くもの、カッコいいものが良いデザインですが、家は土地の上に建つ構造物ですから、それだけでは本当に良いとは言えません。ましてや、今盛んに宣伝されている、○○仕様や××装備などのオプション・オンパレードは、二の次、三の次の問題で論外です。

先人先輩・建築家の教えとして、「建築設計の要諦は意匠(デザイン)と構造は一体でなければならない」、「構造は真実を表現したものでなければならず、真実がもたらす美を具有しなければならない」と強調しています。

私たちが伝統的な木組みの構造にこだわるのは、構造体そのものが力学的な理に適うことで、バランスとプロポーション、全体美を生むと思っているからです。細部に至っては、木組みの出来栄えと木肌等の見え掛りにこだわり、手技の切れ味による美が存在しなければならないと思っています。

2017年1月19日木曜日

「限界耐力計算解説書」より、現行の耐震診断法との違い

地方公共団体が行う木造住宅の耐震改修助成制度のほとんどは、日本建築防災協会が示す、一般診断法あるいは保有耐力診断法で、改修後に 1.0 以上の評点になる事としている。

評点=保有する耐力 (Pd) /必要な耐力 (Qr)

評点による診断
   Pd / Qr ≧1.5        倒壊しない
           1.5>Pd/Qr ≧1.0    一応倒壊しない
           1.0>Pd/Qr ≧0.7    倒壊する可能性がある
           Pd / Qr <0.7        倒壊する可能性が高い

この診断法では基本的に壁の強度のみを評価しており、軸組の垂れ壁・腰壁がついた場合のフレーム効果しか見込んでいない。従って壁の少ない建物は必然的に保有する耐力が小さくなる。
また必要な耐力は基準の耐力係数として Co=0.2 を与えており、入力レベル及び変形量(被害度)との相関関係が加味されていない。
倒壊するかどうかは、地盤や建物自体の性質によって変わるので、このような強度本意で評点を求める判定方法は、木造住宅の性質に関する理解がなければ危険度の判定結果を生むおそれがある。

2017年1月10日火曜日

会報「創生」1月号「編集後記」

今日は師走の12月30日、この会報をつくりながら今年を振り返っています。

あっと言う間の一年でしたが、思いもよらぬ多くの皆様との出会いがあり、その後のお付き合いも続いています。
特にこのプロジェクトを立ち上げ、共感する皆様との結びつきに、喜びと感謝の思いで一杯です。

ところで昨今の日本並びに世界情勢を見ますと、今まさに時代の転換期を迎えています。歴史は繰り返すと言われますが、1930年代、昭和初期の時代背景そのままに逆戻りしています。

技術や科学・学術は急速に進歩するが、人の本質は何百・何千年を経て少しずつ進化するものだと教わっています。その意味においては、これからの逆境も必要必然、天然自然の理なのかもしれません。

幾多の苦難を乗り越えた先人に見習い、この時こそ自分たちの真価を試される良きチャンスだと、プラス思考でチャレンジしましょう。

「憂きことのなほこの上に積もれかし、限りある身の力ためさん:熊沢番山」 武石 明