近頃は、自分だけの個性的な家を望んだのでしょうが、住宅雑誌や住まいの本の受け売りで、似たような無国籍の家が建ち並んでいます。この現実を見ると悲しいものがあります。住まいは「斬新な」と言えるほど個性的である必要はなく、雑誌の切り抜きを寄せ集めたような安易なものではありません。
一般的には目を引くもの、カッコいいものが良いデザインですが、家は土地の上に建つ構造物ですから、それだけでは本当に良いとは言えません。ましてや、今盛んに宣伝されている、○○仕様や××装備などのオプション・オンパレードは、二の次、三の次の問題で論外です。
先人先輩・建築家の教えとして、「建築設計の要諦は意匠(デザイン)と構造は一体でなければならない」、「構造は真実を表現したものでなければならず、真実がもたらす美を具有しなければならない」と強調しています。
私たちが伝統的な木組みの構造にこだわるのは、構造体そのものが力学的な理に適うことで、バランスとプロポーション、全体美を生むと思っているからです。細部に至っては、木組みの出来栄えと木肌等の見え掛りにこだわり、手技の切れ味による美が存在しなければならないと思っています。