2021年12月20日月曜日

新潟市東区、照大寺・鐘楼門の改修工事

今年の3月、丸三安田瓦工業の遠藤社長から相談を受けました。

寺の鐘つき堂の屋根の修繕を頼まれたが、下地が腐っているので調べて欲しいという要望です。



現場に行って見ると、建物全体が大きく傾いています。

これでは屋根だけ補修しても、地震や大風が発生すれば倒れてしまいます。



その現状を注文主に説明し、耐震改修もする事になりました。

先ずは、傾いた建物の4面を垂直に直す事から始まります。

その後に屋根の瓦を取り払いました。



案の定、屋根板や垂木、軒先の茅負・裏甲まで腐っていて、全て取り換えなくてはなりません。

これらの材料は特殊な形状なので現物の寸法を全て調べて、同じ寸法で新しく作ります。これらを取り付けて、屋根の修繕は完了です。



最後に、耐力壁として使う格子組を工場で組み立てます。

材料の太さも規模も大きいので現場への搬入も大変です。

隙間のできない様に取り付けるには、高度な技術が必要です。



取り掛かってから3カ月間を要しましたが、思い通りの姿に復元しました。



2021年12月10日金曜日

古民家の改修・改築は誰にでも出来るものではありません

60年以上経った木造の家は、今風の家とは根底から違います。

柱の本数は少なく壁は土壁が殆どです。

それでも、台風や地震に耐えてきました。




最近の家づくりは地震に対する耐力を、筋交いや合板に頼っています。

この古い家を改修するとなると、構造力学に基づいた耐震計算が必要となります。

この計算法は高度な理論を基にしていますので、誰にでも出来るものではありません。


改修工事は現状の構造体を変える事になるので、大工職人の高度な技術が必要です。

梁や柱を入れ替えるには、ノコギリ・ノミ・カンナを自在に操られなければなりません。

尚且つ、屋根や外装・内装・基礎を担当する職人との連携が必要です。


私たちはこれまで、同じ現場で何度も経験してきました。

これからの時代、古民家は地域にとって貴重な財産となります。

改修・改築すれば出費も少なく、居住性や性能は高まります。





2021年12月1日水曜日

福隆寺・本堂の耐震改修工事の経過 No.3

工事の施工手順は、現場に入る前に木材の加工をしなければなりません。

倉庫に保管してある木材をその用途に合わせて工場で加工します。


大半の木材はスギ材ですが、土台はケヤキ、廊下の床材はヒノキです。

床板や天井板は全て張替えになるので、現状に合わせて幅や長さを決め仕上げます。

この選別と加工は長年の経験を積んだ大工職人の技術を要します。




この建物の柱脚は、外部に面した部分は土台で受けているが、内部の柱の全てが礎石の上に直接建っています。

土台の一部は柱の圧縮によりめり込み、床面が下がっています。


内部の柱は礎石との接合部が腐れています。

これを修復する為に、建物全体を持ち上げ損傷部分を入れ替えます。

先ずは、床板全てを取り払います。



次に、建物を補強してジャッキで持ち上げます。

ところが柱の中心部にシロアリの被害が10本以上も見つかり、建物を下ろした後入れ替えました。



その後、足固めの取付とサッシの入れ替え、外壁の下見板を張ります。

今年は床下地を組み、来年春より屋根の改修を行う予定です。



2021年11月20日土曜日

福隆寺・本堂の耐震改修工事の経過 No.2

伝統木造構造の建物の構造計算は限界耐力計算法で計算します。

地震力による建物の変形量を階高との比率で表します。

階高が300cmの建物が6cm傾いた場合は、5/300=1/60と表示します。




地震力は建物の重量に地震の加速度を乗じます。

屋根の重量は瓦の重量と雪の重量を加算します。



その条件で耐震計算をした結果、X・Y両方向も安全地である1/20以内を確認しました。ところが昨年、瓦屋根を鋼板屋根に変更することになりました。

となると、屋根や雪の重量が変わるので構造計算をやり直さなければなりません。





今年5月より再度の構造計算を始めました。

計算の結果、X方向は1/39、Y方向は1/54の数値となり安全性が2倍以上も高まりました。この数値は偏心率が0.15以下を前提としているので、同時に偏心率と水平構面の剛性の確認も必要です。



2021年11月10日水曜日

福隆寺・本堂の耐震改修工事の経過 No.1

福隆寺(阿賀野市寺社)本堂(床面積114坪)の耐震改修工事が8月20より始まりました。

この仏閣の創建は1853年(嘉永6年)ペリー艦隊来航(黒船来航)の年で、168年が経過しています。

1966年に屋根を茅葺から瓦に改修しました。


2015年に住職より、この本堂を後世にまで存続したいのだが、可能かどうかと相談を受けました。

そこで全ての部材を調べて構造計算を行った結果、可能と判断しました。


問題は工事費が幾らになるかです。

詳細設計を基に積算した結果、約9,500万円となりました。

檀家の皆さんの了承を得ましたので、5年後に実行する事になりました。


建築用材としての木材は天然乾燥が前提ですので、事前に用意しなければなりません。

2019年に、知り合いの阿賀町上川の石川さんの山林に入って、大径木を選びました。

地元の製材所で製材し、倉庫に保管してあるので品質は抜群です。



2021年11月1日月曜日

これからも、大工職人の後継者育成を継続する

私たちの家づくりは、太くて長い木材を組み立てて構造体を作ります。

その理由は、高度な耐震性能と耐久性を求めているからです。


それを作るには、大工職人の高度な技術とセンスが必要です。

その為に、若い大工さんには現場での訓練を徹底しています。


今年9月より、お寺の鐘楼の改修工事や本堂の耐震改修工事を行っていますが、先人の匠の技を学ぶ絶好のチャンスです。

これまで、見た事も聞いた事もない木材の加工にチャレンジしています。

この技術は若い時から訓練しなければ身に付きません。

今回の経験を機に一気に成長する事を期待しています。


これからの家づくりは、高度な性能が求められます。

今風の金物に頼る工法ではそれに対処出来ません。

大工職人の高度な技は、益々希少価値が高まります。

その為にも、私たちは後継者の育成を継続しています。



2021年10月20日水曜日

木造の家を新築する時の注意点

木造の家の品質は、誰に設計を頼むかによって決まります。
家は構造物なので、基礎・軸組・床組・屋根組によって成り立っています。
これらを構成する部材は、基礎以外は全て木材です。


木材は鉄やコンクリートと違い、独特な特性があります。
なので、木の特性を活かした構造体でなければ、地震や台風に襲われた時に安全性を確保する事は出来ません。
それを証明するのが構造計算です。


木構造の構造計算は特殊なので誰にでも出来るものではありません。
長年の経験と高度な計算力が必要です。
他にも、居住性や防火・遮音・省エネ・デザイン等、注意点は幾つもありますが、先ずは構造体の安全性が先決です。


安全性を確保するためには、太くて長い木材で組み立てます。
その為には、大工職人の高度な技が必要で、誰にでも出来るものではありません。
事前に大工担当者に会って、その人の経歴を確認しましょう。



2021年10月10日日曜日

屋根・2階床の変形防止が耐震構造の前提

建物に地震力が加わった時、その水平力に抵抗するのが耐力壁です。

その建物の重量に比例して地震力が決まります。


各所に配置された耐力壁の強度に応じて地震力が配分されます。

その地震力を耐力壁に伝えるのが、屋根構面や2階の床構造で水平構面と言います。

この水平構面が柔らかくて変形すると、地震力を均等に伝える事が出来ません。

その為に、水平構面が変形しない構造体を作らなくてはなりません。


一般的には、小屋筋交いや火打ち梁、2階構面には24mm以上の合板を下張りします。

伝統構法の基本は金物やクギを使わない工法なので、太くて長い梁を縦と横に組み合わせ、変形防止の構造体を作ります。


これにより、大きな地震力に押されても元に戻る構造体となり、均等に耐力壁に伝える事ができます。

耐力壁の強度の確保は勿論ですが、水平構面の変形防止が更に重要です。




2021年10月1日金曜日

「省エネ住宅」とは何か?

これからの時代、国の政策として消費エネルギーの削減が掲げられています。

この度住宅に関しても、その指針が示されました。

先ずはその概要をお知らせします。


住宅は、基礎・外壁・内壁・窓・天井・屋根によって構成されています。

これらの部分は外気に接しているので、室内に熱が伝達されます。

この室内気温を調整するために、冷暖房や換気をします。


お風呂のお湯を温めるためには給湯器、室内には照明器具が必要です。

そのエネルギー源は電気やガス・灯油です。

これに掛かる費用を少なくする事が目的です。


それを算出する方法として、室内の床・壁・窓・天井の断熱性能と面積を掛け合わせて数値を出します。

地域によって気候が違うので、国が定めた消費エネルギーの限度が数値で示されています。

それと比較して「省エネ住宅」の可否を判定します。

2~3年後には確認申請の必要条件となる予定です。




2021年9月20日月曜日

改修工事を依頼する時は、その目的を明確に伝える

家の果たす役割は多種多様です。

建てた当時は満足しても、年数が経つ事によって不便や不具合が生じます。

それを解消する為に専門業者に相談します。


その時、誰を選ぶか、が大切です。

木造の家の改修設計は、長年の経験と高度な建築技術を持った建築士でなければ出来ないからです。

次に大切な事は、何に不便や不足を感じるのかを明確に伝える事です。

あやふやな伝え方だと、目的と違った工事となる危険があります。


同時に予算の範囲も伝える事も重要です。

理想的な改修設計ができても、予定外の出費であれば実現不可能です。

更に直接工事を施工する担当者とのコミュニケーションも大切です。

設計図が出来上がっても担当者の違いによって、目的の捉え方が異なる場合があるからです。

その為にも再度、要望する内容を伝えるべきです。


同時に工事の進行状況も常に確認します。

出来上がってみたら、こんなつもりでは無かった。では悔やんでも悔やみ切れません。



2021年9月10日金曜日

金物を使わない木組みの家は、間取り変更が容易です

最近の家づくりはプレカット工法が殆どです。

短くて細い木材を金物やボルトを使って組み立てます。

この工法は木材の強度に余裕がないので、屋根や梁組を取り換えなければなりません。

解体した木材は金物やボルトを使っているので、接合部には傷や亀裂があるので再使用はできません。

結果として膨大な工事費が掛かります。




それに対して、伝統的木構法は、長くて太い木材を金物を使わないで組み立てます。

木材の強度に余裕があるので、一部の柱や壁を外しても構造的な影響はありません。

取り外した梁や柱には損傷がありませんので、そのまま使う事もできます。

木材と施工費の節約により出費も少なくて済みます。

建てた当時は良かったにしても、年数が経てば間取り変更が必要となる場合があります。

その為にも、金物を使わない木組みを家をお勧めします。